賢者も将来は活用してみたいヘッジファンド
「ヘッジファンド」と聞くと、「何か怪しい…」「胡散臭い…」「リスク高そう…」と思われる方も多いのではないでしょうか?
世間からは、へッジファンドは「お金の為なら何にでもする集団…」というようにマイナスイメージで捉えられがちですが、一体どういった集団なのでしょうか。
それが本当に資産運用に役に立つのでしょうか?
ヘッジファンドとは何なのか?
『複数の投資家からお金を集めて、その集めたお金を何かに投資し、そこからの収益(リターン)を出資した投資家に分配する仕組み』が「ファンド」と広義的に呼ばれています。
その中でも「ヘッジファンド」とは、『さまざまな運用手法を駆使して、市場が上がっても下がっても利益を追求することを目的としたファンド』のことを言います。
ヘッジ(hedge)は直訳すると「避ける」という意味ですが、‟相場が下がったときの資産の目減りを避ける(回避する)“といったところがその名の由来になっています。
このヘッジファンドですが、一般的な投資信託が運用方法に制限を設定する為、相場が一方向に動いたときのみ利益が出る仕組みのものがほとんどなのに対し、比較的自由な運用が可能である為、先物取引や信用取引などを積極的に活用することで相場の上げ下げに関係なく、常に利益を得るよう機動的に運用を行うことができるのです。
このようにリスクをヘッジしながらも積極的な運用を基本とし、どんな局面でも利益を追求していくのが最大の特徴です。
ヘッジファンドと投資信託の違い①
ではヘッジファンドと、よく比較される投資信託(国内株式投資信託)がどのような点が異なるのか、詳しく解説しましょう。
ヘッジファンドと投資信託(国内株式投資信託)は、どちらも運用のプロにお金を預けて運用を委託する資産運用方法です。ただし両者には運用の目標設定やその手法に大きな違いがあるのです。
国内株式投資信託の運用方針は、多くの場合「株式組入を高位に保つ」としており、相場に合わせて投資比率を変えることはほとんど行わず、常にファンドの資産いっぱいに株式などを保有(フルインベスト)しています。またその運用目標として「ベンチマークを上回ること」が掲げられます。
ベンチマークとは、ファンドごとに設定される一定の目標で、ファンドの投資対象に合った指標(株価指数や債券指数など)が選ばれます。そのベンチマークが上ればそれを超える値上がり率を目指し、ベンチマークが下がれば、その値下がりよりも値下がり率を小さくすることを目指します。
ただし、この「フルインベスト」では、株価指数が下がる時にファンドの基準価額を上げることは困難であり、大抵のファンドは株価指数とともに値下がりしてしまいます。このような場合、保有銘柄をなるべく値下がりしにくいものにシフトするなどして、運用方針の範囲内で値下がりを抑えることに最善の努力を尽くしますが、「売却して運用をいったん手控える」ようなことまでは行いません。
このようなベンチマークに対しての運用成果を相対収益(相対リターン)といいます。
これに対し、ヘッジファンドの多くは、株価指数が上がっても下がっても、プラスの収益を目指します。これを絶対収益(絶対リターン)追求型の運用といいます。
因みに、この『絶対収益』の意味ですが、よく『絶対に(必ず)収益を上げる!』という意味に誤解されますが、本当は『比較対象(ベンチマーク)がない状態』での収益という意味です。
このように運用内容などに規制の厳しい公募の国内投資信託と違い、運用の自由度が高いのがヘッジファンドです。そこで先物取引などを利用した効率の良い運用や、高度で複雑な金融工学を駆使した運用で、リスク管理をしながら、より積極的な姿勢で収益を狙うことができるのです。
ここで最も注意しておかないといけない点は、相対収益を追求する投資信託では、相場全体の大きな流れを投資家側が判断しなければならないことです。
相場が過熱感を帯びてそろそろ値下がりする可能性が高まったと考えるなら、投資信託としては「運用を手仕舞う」ワケではりませんから、投資家自身がそのファンドを売却しなければなりません。でなければ相場全体の下落の影響を受けることになるからです。
それに対して、絶対収益を追求するヘッジファンドは、ファンドマネージャーの判断で株式の保有比率を下げたり、先物などで値下がりを回避(ヘッジ)したり、もともと市場の値下がりに影響を受けないポートフォリオを組んであったり…と、様々な形で下落相場の影響を避ける方法を有しています。従って値下がりしそうな場合でも、投資家が相場の先行きを判断して慌てて売却に動く必要がないのです。
つまりどんな局面でもすべての運用を行ってくれるのです。
ここが両者の最大の違いと言えるでしょう。
投資信託は小口資金で購入が可能であり、投資先と投資家をつなぐ便利なツールではあります。がその反面、投資資産の保有比率(ポジション)管理は投資家本人が担わねばなりません。
これに対し、ヘッジファンドはポジション管理も含めて運用をすべて任せられる金融商品ということが言えるのです。
ヘッジファンドと投資信託の違い②
また当然ながら、ここまでの運用をしてくれるヘッジファンドですので投資信託とは「手数料」が大きく異なります。
投資信託では「販売手数料」と「信託報酬」が必要となります。
販売手数料は投資信託を購入する際に証券会社などが徴収する手数料のことを指し、信託報酬は投資信託を持ち続けた場合にかかる手数料となります。
ちなみに販売手数料は購入額の0%~3%、信託報酬は年率で2%~5%ほどかかるのが一般的です。
一方、ヘッジファンドでは「残高に対する手数料」と「成功報酬」が徴収されます。
残高とは投資家から集めた資金の合計額であり、一般的に残高の約2%を手数料として払わなくてはなりません。
またそれに加えて、運用の成績が目標値を上回った場合にのみ徴収する成功報酬を収入源としています。これは通常ですと、利益の20%~30%くらいの割合となっています。
この成功報酬は運用を実際に指揮するファンドマネージャーが受取るシステムとなっています。
(余談ですが、この制度により、ファンドの値上がりとファンドマネージャーの収入が連動することから、収益獲得へのモチベーションを高める効果が高いといわれています。それ故このような仕組みから、ヘッジファンドには他と比べて、優秀な人材が集まり易く、より運用に長けたプロが集まり易いとも言われています。)
このようにヘッジファンドと投資信託では手数料の面でも大きな違いがあります。
またこの手数料率も会社によって大きく変わるため、ヘッジファンドや投資信託に投資する時には十分に留意しましょう。
どんな人がヘッジファンドに預けるのか?
では、最後に、どのような人がこのヘッジファンドを活用しているのでしょうか?
ヘッジファンドの最低投資金額は、最低500~1000万円程度と言われています。一昔前はこれが最低3000万円程度でした。そういう意味では以前よりは身近なものになってきたと言えるでしょう。
ただし、そうは言ってもヘッジファンドに投資する人は、主に機関投資家や年金基金、または富裕層の投資家などがまだまだ中心です。
また普通の投資信託等は「公募(こうぼ)」といって広く一般に募集されます。その為、銀行や証券会社などの販売会社を通じて簡単に購入することが可能です。
それに対し一般的なヘッジファンドは「私募(しぼ)」といってごくごく限られた人・法人等のみに販売されるものがほとんどです。その為投資を希望する場合には、広く募集・販売されているわけではありませんので、直接運用会社に申し込んで取引(投資)することになります。
(ただし最近では、ヘッジファンドを投資対象とした投資信託などが日本国内でも販売されています。)
日本国内ではヘッジファンドへの投資はまだまだ浸透していませんが、海外では広く普及しています。
実は日本にも「合同会社M&S」(M&S LLC)などのヘッジファンドが存在しています。
M&Sは日本でも有数の高リターンヘッジファンドで、2016年には年間リターンが45%を超えたことも話題になりました。M&Sも原則日本の株式を投資対象としており、個人投資家も参加できるヘッジファンドとなっています。
まとめ
このように、運用の1つとしては実は大変有益な手法といえるのがこの「ヘッジファンド」です。
ヘッジファンドの中には「ハゲタカファンド」と呼ばれるように悪質なまでの利益追求を目指すものもあったりすることから、世間一般からは馴染みが薄く、どこか怪しい集団…と見られがちですが、そのほとんどは可能な限りの運用手法を駆使して収益を追求する「運用のプロ中のプロの集まり」と言ったものでしょう。
以前よりもその存在は身近になってきましたが、その投資金額の高さや手数料の問題などにより、まだまだハードルが高いのも現状です。しかしながら資金のある方にとっては有益な運用の1つと言えるでしょう。
将来的には資産運用の際の1つのツールとして検討していくのも良いのではないでしょうか。
株式会社VIDA MIA 代表取締役 大西宏明
保険やオペレーティング・リース、国内外の株式・債券・投資信託など多岐に渡った金融商品を活用しながら相続・事業承継対策スキームを策定し、専門家の税理士や弁護士とも提携して遺言の作成および民事信託(遺言代用信託)の提案も行なう。
特定の金融機関には属さず、近畿圏を軸に国内で幅広くワンストップ型の独立系総合金融コンサルティングを展開中。
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