賢者におすすめしたい「個人年金保険」と「iDeCo」の活用
目次
「個人年金保険」と「iDeCo」が老後資産形成に有効なワケ
老後資金を準備するとき「節税効果」を発揮する年金の商品・制度を活用されるべきとの見地から、私たちが老後資産形成のベースとしておすすめしているのが、民間生命保険会社の「個人年金保険」と「iDeCo(イデコ)個人型確定拠出年金」です。
両者は「自分の将来のために自分で積立てをする」いわゆる“私的年金”と呼ばれるものです。
賢者の中には単に預貯金だけで引退後の老後資金を準備しておられる方もいらっしゃいますが、やはり「節税効果」を存分に発揮する長期的かつ効率的な資産運用をご検討された方が断然有利と云えましょう。
まず、私たちが老後資産形成のベースとしておすすめするのが、民間生命保険会社の「個人年金保険」(日本円建・米㌦建・豪㌦建)です。
個人年金保険の保険料は、一定の要件を満たせば「一般の生命保険料控除」とは別枠の「個人年金保険料控除」の対象となり、これによって毎年積立てる個人年金保険料の1/2、所得税で年間最大4万円、住民税で最大2万8,000円の控除が受けられます。ただし、個人年金保険料控除の額はこれが上限となりますので、年間8万円以上の個人年金保険料を積立ててもそれ以上の節税効果は得られません。
そのため、私たちは各生命保険会社の規程に沿って(最低保険料を若干上回る程度の)月1万円、または年間12万円程度の保険料設定でのご契約をおすすめしています。
~ 外貨の方が円と比して金利が圧倒的に高いこと、将来の為替変動リスク(長期的な見地に立てば「日本円」の価値が相対的に下がるリスクがあります)等を鑑みて、老後資産形成のために外貨建個人年金保険のご加入を検討されるのも良いでしょう ~
次に私たちがおすすめするのが「iDeCo(イデコ)」です。さらに大きな「節税メリット」を享受しながら老後資金の形成を図っていただくために、iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用をおすすめしています。税務面で様々な優遇措置が設けられており、こちらを上手くご活用いただきたい。
どうして「iDeCo」の節税効果が大きいのか?
それは、積立・運用・受取の3段階でそれぞれ節税効果が得られるからです。
積立時、掛金はその全額が所得控除を受けることができます。また、運用時には通常株や投資信託などの金融商品から得た利益に対して現在20.315%で課税されるのに対し、「iDeCo」の運用で得られる利益は非課税になります。加えて、受取時に年金として受給すれば公的年金控除の対象に、一時金として受給すれば退職所得控除の対象となります。まさに一石三鳥の税制優遇メリットとも云えましょう。
ただし、「iDeCo」にも注意すべき点があります。
まず、第一に運用商品を自己責任で指定していかねばならず、つまり、運用リスクを自分自身で負わなければならない点です。
リスクもリターンも低い預貯金に近い「元本保証」の商品で運用するのか、はたまたリスクは大きいもののリターンも期待できる外国債券や外国株式などを組み込んだ「投資信託」で運用するのか・・・運用商品のラインナップは各取扱金融機関によって様々ですが、それらラインナップの中から自分自身で商品を選択していく必要があります。
なお、この運用益は課税されることがありませんので、上手く運用できれば、老後の生活資金に大幅な余裕を持たせることになるかも知れません。
次に、原則60歳まで積立金の引き出しが認められない点が注意点として挙げられます。
さらに、金融機関にてiDeCo口座を開設するための手数料負担が別途必要になってきます。
しかし、これらの注意点を踏まえても税制上のメリットの方が大きくなることが殆どのため、私たちは「iDeCo」が賢者の老後資金を準備するにあたって極めて有効な制度と考えています。
ここからは「iDeCo」の仕組みや特徴について、深く掘り下げて分かりやすく解説していきます。
では、そもそもこのiDeCo、いったい何なのでしょうか?
iDeCo(イデコ)とは、老後資金を自分で作るためのおトクな制度
iDeCoとは、「個人型確定拠出年金」の愛称なのですが、ざっくり言ってしまうと「老後資金を自分で作るためのおトクな制度」です。
60歳までの間に毎月一定の金額(掛金)を出して、その掛金で投資信託や定期預金、保険などの金融商品を選んで運用し、60歳以降に運用した資産を受取るというものです。
運用した資産が60歳の時にどのくらいの額になっているかは、60歳になってみないと分かりません。運用次第で積み立てた掛金(元本)を上回ることもあれば、場合によっては元本を下回る可能性もあります。つまり、自分自身の投資判断次第で、将来もらえる資産を大きく増やすことができるのです。
定年退職後の生活やお金については、多くの賢者が不安を抱えていると思います。国民年金や厚生年金などの公的年金だけでは、ゆとりある老後の生活を送るには不十分。となれば、足りない分は自分自身の力で老後資金を用意する必要が出てきます。iDeCoはまさにそんなときに役立つ制度なのです。
では、このiDeCo、どんなおトクなメリットがあるのでしょうか?
<iDeCoのメリット①> 掛金が全額「所得控除」され、毎年税金が還付される
iDeCoの最大のメリットは、何といっても「税金が安くなる」優遇があることです。
まず、iDeCoで積み立てた掛金の全額が所得控除され、所得税・住民税が軽減されます。年末調整や確定申告を行うことで、所得や掛金に応じて納めた税金が還付されます。
例えば、年収500万円の勤務医が毎月2万円をiDeCoで積み立てた場合、年間で約4万8000円もの節税になるのです。iDeCoの運用成績に関係なくこのようなお金が戻ってくるのですから、そのおトク効果は絶大と云えます。
<iDeCoのメリット②> 掛金運用中に得た利益に税金はかからない
また、iDeCoでは運用期間中に得られた利益に税金がかからないのも大きなメリットです。
一般的に、投資信託で得られた売却益や分配金、定期預金の利息には20.315%(=所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)の税金がかかるのですが、iDeCoで運用した場合、税金は取られません。
得られた利益から税金が差し引かれることなく、そのまま運用に回せるので、利益がさらに利益を生んで、雪だるま式に資産を増やすことができるのです。
<iDeCoのメリット③> 運用資産を受取る時も、「退職所得控除」「公的年金等控除」でトクする
さらに、運用した資産を受取る時にも節税メリットが受けられます。
運用した資産は60~70歳までの間に、「一時金」「年金」「一時金と年金の両方」の3つのいずれかの形式で受取ることになるのですが、いずれを選択しても、税金の優遇が受けられます。
一時金の形式で受取れば「退職所得控除」が、年金の形式で受取れば「公的年金等控除」が受けられ、所得税がグンと安くなるのです。
~ iDeCoで増やした資産1,000万円を受取る場合 ~
[年金方式]で10回に分けて受取ると
【公的年金等控除が適用される(65歳未満のケース)】
1.課税対象はいくら? 100万円×100%(割合)−70万円(控除額)=30万円[課税対象]
2.納税額はいくら? 30万円×5%(所得税率)=1万5,000円[納税額はこれだけ]
[一時金方式]にて一括で受取ると
【退職所得控除額が適用される(勤続25年のケース)】
1.控除額はいくら? 800万円(勤続20年までの控除額)+70万円(21年目からの控除額)×5年=1,150万円[控除額]
2.納税額はいくら? 1,150万円までは非課税。1,000万円の受取りなので、0円[納税額]
<iDeCoのメリット④> 月額5,000円から気軽に始められる
老後資金の運用ともなると、大きな金額が必要なのでは・・・と思う人がいるかもしれませんが、iDeCoの掛金は毎月5,000円から。お手頃な金額から気軽に始められ、毎月コツコツ積み立てられる堅実さもメリットの一つです。
5,000円であれば、無理なく捻出できそうですね。
<iDeCoのメリット⑤> 運用する金融商品のコストが低い
iDeCoで積極的な運用を行なうのに欠かせないのが、「投資信託」という金融商品なのですが、iDeCoで取り扱われている投資信託は、一般で販売されている投資信託と比べて、信託報酬など運用期間中にかかるコストが低いものが多いのです。
また、一般で販売されている投資信託には、購入した時に購入手数料がかかることがありますが、iDeCoで取り扱われている多くの投資信託には、購入手数料がかかりません。
コストが低いほど、その分効率的な運用ができ、その運用の成果は長期になるほど大きくなっていきます。コスト面で優しい金融商品選びができるのもiDeCoのメリットです。
このようにメリットがたくさんのiDeCoですが、デメリットもいくつかあります。iDeCoを始めてから後悔することがないよう、デメリットも理解しておきましょう。
<iDeCoのデメリット①> 60歳まで運用中の資産を引き出せない・・・
iDeCoの最大のデメリットは、60歳になるまで積み立てた資産を引き出せないことです。また、途中で解約することも原則認められていません。iDeCoを始めるからには、「老後資金以外では絶対使わない!」という覚悟を決めて挑みましょう。
<iDeCoのデメリット②> 口座開設・維持に意外と手数料がかかる・・・
iDeCoでは口座開設・維持に、それぞれ手数料がかかります。まずiDeCoに加入する時に最低でも2,777円を、運用期間中も月額167円を支払います。iDeCoを取り扱う金融機関によっては、さらにこの額にプラスして手数料を支払うことがあります。
仮に30歳から60歳までの30年間、iDeCoで運用した場合、最低でもかかるトータルの手数料は、2,777円+(167円×12カ月×30年)=6万2,897円にもなります。
iDeCoは長丁場の投資になります。となると、トータルでかかる手数料の額は侮れません。口座にかかる手数料を意識して金融機関を選ぶ必要があります。
以上、iDeCoのメリットとデメリットについて取り上げましたが、老後資金をしっかりと作りたいなら、iDeCoを利用しない手はありません。将来の自分や生活のためにも、iDeCoの活用を前向きに検討してみませんか?
手数料比較や運用商品からiDeCo(イデコ)の運営管理機関を選択
『iDeCoで利用できる金融機関は1社のみ!』
iDeCoを始める際に「運営管理機関」という、確定拠出年金を取り扱う金融機関を決めなければなりません。
iDeCoの利用者はこの金融機関を通して、iDeCo加入の申込みや運用などを行ないます。専用口座を開設したり、運用商品を選定したり、運用に役立つ情報を提供するなど、iDeCoの運用がスムーズに行えるよう支えてくれるのが、金融機関の役目なのです。
iDeCoで利用できる金融機関は1社のみと決められています。老後までの長い付き合いとなるiDeCoですから、金融機関選びは非常に重要な選択となります。
自分自身が納得できる金融機関を選ぶには何に注意すればよいのでしょうか?これからお話しする、3つのポイントに是非注目してください。
iDeCoは「手数料」が安い金融機関がおすすめ
iDeCoでは、毎月の掛金のほかに、「手数料」を支払います。この手数料の額は金融機関によって大きく異なります。低く抑えられる費用があるのなら、それは是非とも抑えておくべき。まずは、手数料が安いか高いかを確認しましょう。
iDeCoの手数料には大きく分けて2種類があります。1つは、iDeCoに加入する時だけ支払うものです。多くの金融機関は手数料を2,777円としているのですが、なかには、この額より1,000円程度多めに支払わなければならない金融機関もあります。
もう1つは、運用期間中に毎月支払うもの。金融機関によってその額には大きな差があり、最低で月額167円、なかには月額400~600円ほどかかるところもあります。わずか数百円の違いですが、長期になってそれが積み重なると、見過ごせない金額に・・・。運用期間中にかかる手数料は是非こだわってチェックしましょう。
iDeCoは「サポート」が充実している金融機関がおすすめ
また、iDeCoに加入した後のサポートサービスが充実しているかも注目したいポイントです。
運用の指示や資産状況の確認、情報収集などは通常、金融機関のWEBサイトの加入者画面で行います。ただ加入者画面というのは、実際に加入してみないとわからない部分が多く、加入前での確認は難しいものです。
それと、いざという時に頼りになるコールセンターの充実ぶりも確認しておきたいところです。コールセンターはつながりやすいか、電話対応がよいかなど、加入前に確認してみるとよいでしょう。
平日の深夜や土日でもコールセンターで問い合わせを受け付けてくれる金融機関は、仕事が忙しい人にとってありがたいものです。
iDeCoは「運用商品」が充実している金融機関がおすすめ
iDeCoで運用する商品のラインアップが充実しているかどうかも、金融機関選びで見逃せないポイントです。
商品は、定期預金や保険の「元本確保型」と、投資信託の「元本変動型」の2種類に大きく分かれ、さまざまなタイプの商品があります。大事なのは、これらの商品がまんべんなくそろっていること。商品のバリエーションが豊富であれば、加入者としては選択肢も広がり選びやすくなります。
iDeCoの金融機関は変更できるけど、手続きがかなり面倒・・・
「すでに金融機関を決めてiDeCoに加入したけど、もっと有利な金融機関が見つかったので変更したい。どうすればいい?」
このような質問を寄せられることがあります。iDeCoに加入した後に、「手数料が安い」「アフターサービスも充実している」など、良い条件の金融機関が見つかることがあるかもしれません。となると、金融機関を変更できないものかと思うのは無理もないことでしょう。
結論を言うと、金融機関の変更は手続きさえ行えば可能です。しかし、この手続きというのが結構面倒ですし、かなりの負担がかかります。
まずは、これまで積み立ててきた資産をいったんすべて売却して現金にします。例えば、iDeCoで運用している投資信託で損が出ていたとしても、その損をした状況で売却しなければなりません。また、保険を資産に組み入れている場合、途中解約で元本割れする可能性があります。定期預金であれば、本来の利率より低い「中途解約金利」が適用されます。
そして、変更先の金融機関に口座を開設して現金にした資産を移し、商品を選択・購入して運用を再開するわけですが、1~2カ月くらいかかることが多いようです。
また、iDeCoの口座を移す時に、変更前の金融機関に4,000円(+税)程度の手数料を支払う場合もあります。
以上のように金融機関の変更には手間と負担がかかります。こういった事態に陥らないためにも、金融機関選びは最初から悔いのないよう念入りに行うことをおすすめします。
タイプ別、iDeCo(イデコ)のおすすめ運用商品
『定期預金、保険、投資信託・・・iDeCoの運用にはどの商品がおすすめ?』
iDeCoの運用を行う金融機関を決めたら、次は「商品選び」です。毎月積み立てる掛金から、金融機関を通して商品を選んで運用していきます。ここでどんな商品を選ぶかで、将来受取る額は大きく異なってきます。
iDeCoにはどのような商品があるのか、どの商品を選んで運用するのがおすすめなのか、少しご紹介いたします。
iDeCoの運用商品は、「元本確保型」と「元本変動型」の2種類
iDeCoの運用商品は大きく分けて、「元本確保型」と「元本変動型」の2種類があります。
まず、元本確保型というのは、文字どおり元本が確保されているタイプのことで、具体的な商品としては「定期預金」や「保険」があります。
運用に回したお金(元本)が減るリスクは低く、原則として元本割れになることはありません。ただし、現在のような低金利の状況だと、大きく増える見込みは殆ど期待できません。
例えば、あるiDeCo向けの定期預金の利率は0.02%で、また、ある積立年金保険の利率は0.005%です。資産を増やすという意味では少し物足りなさを感じるかもしれません。
資産を増やしたいなら、おすすめは「元本変動型」
一方、元本変動型というのは、文字どおり元本が変動するタイプのことで、具体的な商品としては「投資信託」があります。
投資信託とは、投資家から集めたお金をもとに、運用の専門家(ファンドマネジャー)が株や債券などの複数の商品に投資・運用する金融商品のことです。
運用成績次第で元本が増えたり減ったりする投資性の高い商品なので、資産を大きく増やせるチャンスがある一方で、逆に資産が減ってしまって、元本割れを起こす可能性もあります。
「元本確保型」と「元本変動型」、みんなはどっちを選んでる?
実際のところ、iDeCoへの加入を考えている人はどのような商品を選びたいと思っているのでしょうか?
野村総合研究所が公表した「iDeCoに関するアンケート調査結果」によると、元本確保型のみを選択すると回答した人は34%と最も多かったのですが、一方で、20%は元本確保型と元本変動型の両方で運用したいと回答しており、14%に至っては元本変動型のみを選択すると回答しています。
元本確保型へのニーズは根強いものの、意外にも元本変動型への投資に意欲を持っている人が多いことが判りました。せっかくiDeCoで老後の資金を運用するのだから、これを機会にいろんな商品を使って運用したいと考えている人が多いのかもしれませんね。
iDeCoの運用商品を選ぶ3つのポイント
では具体的にどのような商品を選んで運用すればよいのでしょうか? iDeCo初心者の人向けに3つのポイントをお伝えしましょう。
『iDeCoの運用商品を選ぶ3つのポイント』
[定期預金][バランス型][信託報酬が低い]
<ポイント①> お金が減るのはイヤな人には、「定期預金」がおすすめ
「損したくないので、お金が減るのは絶対イヤ!」という人はかなり多いと思います。そういった人は、ムリに元本変動型の投資信託などで運用する必要はありません。元本確保型の定期預金だけで運用することをおすすめします。
iDeCoのメリットご説明した通り、iDeCoで積み立てた掛金は全額が所得控除され、所得税・住民税が軽減されます。このような節税効果を考えると、定期預金でかまわないので、まずはiDeCoを始めてみることも大事と云えるでしょう。
<ポイント②> どんな投資信託を選べば良いか分からない人は、「バランス型」がおすすめ
将来受取る額を増やしたいと考えているなら、元本変動型の投資信託を組み入れて運用することも検討してみましょう。
ただ、ひとくちに投資信託と言っても、「株式型」「債券型」「REIT(不動産)型」などその種類はたくさんあります。どの投資信託を選べばいいのか分からない・・・という人は、「バランス型」の投資信託から始めてみることをおすすめします。
バランス型の投資信託というのは、さまざまな資産や国にバランスよく投資しているタイプの投資信託です。そもそもこれから最も増える資産を予想して投資をするのは難しいことです。であれば、株式や債券、REITなど、各国のさまざまな資産がバランスよく配分されているバランス型で安定的な運用を目指すのがラクと云えます。
まずはバランス型の投資信託で運用してみて、投資について学んで慣れるトレーニングを積んでみてはいかがでしょうか。
<ポイント③> コストがかかるのがイヤな人は、「信託報酬」が低い投資信託がおすすめ
投資信託は、運用している間に「信託報酬」というコストがかかります。信託報酬は年0.5〜2%程度がかかるのが一般的ですが、これがなかなか侮れません。
仮に投資信託の運用収益が年2%だったとしても、信託報酬が年1.5%であれば、実際の儲けは0.5%(=2%-1.5%)しか残らないことになります。これが長期になると信託報酬が積み重なり、運用で増やすチャンスを逃すことにもなるのです。
運用コストを抑えたいなら、信託報酬が低い投資信託を選ぶことをおすすめします。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの指数と同じような値動きを目指す「インデックス型」の投資信託は、信託報酬が低めです。
iDeCo(イデコ)の資産状況チェック&見直し方法
『iDeCoを始めて、資産残高は毎日確認しています。他にチェックすべき点はありますか?』
iDeCo(イデコ)への加入の手続きも終わり、iDeCoの運用がスタートした後も、大切な資産を守るためにいくつかやっておきたいことはあります。では具体的に何をすればよいのか、少しご紹介しましょう。
iDeCoの資産や運用の状況は3ヵ月に1回のペースでチェック
iDeCo(イデコ)の運用が始まれば、自分の資産がどうなっているのか、気になってしまうのが人情というもの。
iDeCoの資産や運用の状況は、金融機関(運営管理機関)のウェブサイトにある加入者画面から見ることができます。そのため、毎日画面を開いて、資産残高が増えているか減っているか、一喜一憂しながら見てしまう人も多いようです。
お気持ちはよくわかりますが、実を言うと毎日チェックする必要はありません。リーマン・ショックのような大きな経済危機が起きない限り、1日で資産残高が劇的に変動することはないからです。実際に毎日チェックを続けてみると、1日だけではさほど大きな値動きを見せないことに気付くはずです。
とは言うものの、何もしなさすぎるのもよくありません。運用を開始してから1~2ヵ月くらいは画面を頻繁にチェックしますが、その後はほったらかしにしてしまう人も多いようです。
では、一体どれくらいのペースでチェックするのが良いのでしょうか? 例えば、上場企業は3ヵ月に1回決算発表を行なっています。それにならってiDeCoの資産や運用の状況も3ヵ月に1回のペースでチェックしてみることをおすすめします。やってみるとわかるのですが、3ヵ月というのは短すぎることもなく、長すぎることもなく、忘れにくい絶妙な期間なのです。
ちなみに、金融機関には最低でも年に1回、iDeCoの資産・運用状況を加入者に郵送で伝えることが義務付けられています。どんなに忙しくても、このときだけはiDeCoの資産状況にしっかり目を通しておきましょう。
iDeCoの資産配分にズレが生じたときは、「リバランス」を
iDeCo(イデコ)加入者画面のデザインや掲載されている内容などは金融機関により少しずつ異なりますが、少なくとも下記の項目についてはチェックしておきたいところです。
1.積み立ててきた掛金の額(元本)はいくらで、運用している資産の時価評価額はいくらか
2.運用している資産が全体的にどれだけ値上がりしているか、値下がりしているか
3.保有している資産・商品がそれぞれ、どれだけ値上がりしているか、値下がりしているか
4.毎月の掛金の配分と、保有資産の配分の割合に大きなズレが出ているか
1.~3.については、目先の運用成績がよくなかったとしても気にする必要はありません。iDeCoは老後資金を作るために長期で運用するものです。資産残高が増えたか減ったかよりも、運用が自分の計画どおりに進んでいるかを定期的にチェックしましょう。
大事なのは4.です。当初設定した掛金の割合どおりに資産も増えるのが理想なのですが、その割合がズレるケースが往々にしてあります。もし資産の配分をズレたままにしておくと、いつのまにか想定以上に値下がりしたり、期待していたリターンが得られなくなる可能性が出てきます。
そのようなことにならないためにも、定期的に資産の配分をチェックし、ズレた配分を元の配分に戻す「リバランス」を行う必要があります。
リバランスを行う目安としてこれという明確な基準はありませんが、掛金の配分と保有資産の配分に5~10%ほどのズレが生じている場合はリバランスを検討してみても良いでしょう。
「配分変更」「スイッチング」で、資産配分や保有商品の調整を
実際にiDeCo(イデコ)の資産・運用状況をチェックしてみて、「資産配分を調整するためにリバランスを行いたい」「いま保有している商品を見直したい」と思うケースが出てくるかもしれません。そんなときは「商品の変更」を検討してみましょう。
商品を変更する方法には、「配分変更」と「スイッチング」の2種類があります。
まず、「配分変更」というのは、掛金の額を変えることなく、どの商品をどのくらいの割合で購入するのかを変更する方法をいいます。
例えば、月2万円の掛金があって、定期預金に1万5,000円、国内株式型の投資信託に5,000円を積み立てていたものを、定期預金に5,000円、国内株式型の投資信託に1万5,000円といった具合に配分が変更できます。
あくまでも割合を変更するもので、保有している商品を手放すものではありません。ちなみに配分変更に手数料はかかりません。
一方、「スイッチング(預け替え)」というのは、積み立ててきた資産を売却して、別の新しい商品を購入する方法をいいます。
例えば、積み立ててきた資産が50万円あって、定期預金が30万円、国内株式型の投資信託が10万円、国内債券型の投資信託が10万円という配分になっていたものを、国内株式型の投資信託を解約して、外国株式型の投資信託を新たに10万円分購入し、国内債券型の投資信託を解約して、外国債券型の投資信託を新たに10万円購入し、定期預金は30万円のまま、といった配分に変更できたりします。
スイッチングで注意したいのは、投資信託を解約するとき、「信託財産留保額」という手数料を支払わなければならない場合がある点です。スイッチングをやりすぎるとそれだけ費用がかかる可能性があるので注意しましょう。
さらに、金融機関によっては、スイッチングできる回数に制限を設けている場合があります。最低でも3カ月に1回はスイッチングができるよう、法律で義務付けられていますが、スイッチングは頻繁に行えるものではないことは抑えておきましょう。
また、掛金の金額も毎年4月~翌年3月までの1年間に1回、変更できます。掛金を増やすべきか、減らすべきかの見直しは、家計の状況を確認したうえで判断しましょう。
iDeCoは運用がスタートした後が大事です。くっつきすぎず離れすぎずほどよい距離感で、資産・運用の状況をチェックして、見直しを行ないましょう。
株式会社VIDA MIA 代表取締役 大西宏明
保険やオペレーティング・リース、国内外の株式・債券・投資信託など多岐に渡った金融商品を活用しながら相続・事業承継対策スキームを策定し、専門家の税理士や弁護士とも提携して遺言の作成および民事信託(遺言代用信託)の提案も行なう。
特定の金融機関には属さず、近畿圏を軸に国内で幅広くワンストップ型の独立系総合金融コンサルティングを展開中。
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