多くの賢者が実施しているマンション投資
ここ最近、不動産投資の「かぼちゃの馬車」が社会的な問題になり、世間を賑わせています。
この問題を理解しておくことは、これから「不動産投資」を行う上で良い教訓となると思います。
そこで今回は「銀行ローン」を活用し、不動産投資を考えておられる方に是非この問題を知っておいていただきたいと思っています。
一体、何がどうなっているのか?何が問題だったのか?をしっかりと理解しておきましょう。
「かぼちゃの馬車」に見る不動産投資の問題点
「かぼちゃの馬車」はスマートデイズが運営する女性専用シェアハウスです。
このシェアハウスは1棟で1~2億円程度の物件でしたが、これを建設しオーナーになることで毎月一定の賃料収入が得られる…という仕組みでした。そして、この際の賃料収入は運営会社であるスマートデイズが『家賃保証を行う』(サブリース契約)という条件が付加されていたのです。またこのアパート建設に際してその大半の融資を実行していたのがスルガ銀行でした。このような関係のもと不動産投資が行われていたのです。
当初、スマートデイズは年8%程度の利回りを提示し「自前の土地や資金が無くてもオーナーになれます!」と顧客の勧誘を行っていました。同時に銀行からの不動産ローンも3.5~5.0%程度で実行されていた模様です。
これだけなら、その差となる年2.0~4.0%程度の利回りが確保され、投資としてはプラスが得られる……はずでした。
ところが昨年2017年10月に謳っていたサブリース賃料の額が大幅に削減され、ローン返済額とほぼ同額まで減額されました。そしてついに今年2018年1月にはサブリース賃料の支払が完全に停止され、オーナーに一切収入が入らない事態になってしまったのです。その為オーナーの中には自己負担によるローン返済額が月100万円以上にも上る方が出てきてしまいました。
結局、スマートデイズが想定していたほどの入居者が集まらず、オーナーに支払を約束していた賃料を行えなかった物件が続出したのが主な原因のようです。
すべては、最初の『計画の甘さ』がすべてだったのではないでしょうか。
過信してはいけないサブリース契約
不動産投資に不慣れな方から多く聞かれるのが、このスマートデイズでもあったように、「サブリース契約があるから安心!」という声です。
サブリース契約は簡潔に言ってしまうと「転貸」「又貸し」です。
不動産オーナーがある人に部屋を貸し、その借りた人が同じ部屋を別の人に貸すことです。そしてこれをパッケージ化し、サービスとして提供するようになったのが、現在のサブリース事業であり、主に不動産会社やアパート建築会社などが実施する形態が一般的になっています。
(「一括借り上げ」とは、アパート・マンションなどの賃貸物件が完成した時から建物すべての部屋を借り上げ、オーナーに対しては満室家賃のうち一定割合を保証賃料として支払うシステムです。サブリース契約のほとんどは、「一括借り上げ」が基本となっており、ほぼ同義語として使われています。)
確かにサブリース契約の最大のメリットは、長期に亘って一定の家賃収入が保証される点です。これだけ考えれば不動産事業のリスクは軽減され、不動産オーナーにとってはとても有り難い契約と言えるでしょう。
また最近では、金融機関も融資を実行する際、サブリース契約の導入を条件とするところが数多くあります。これは不動産事業のリスクを回避する手段のひとつとしてサブリースが有効であると認識されているからです。
ところが、このメリットには見落とされがちな『サブリース賃料の減額請求リスク』が存在することを多くの方は知りません。
サブリース会社は、オーナーから借上げる際、あらかじめ契約書で決めた保証賃料をオーナーに支払います。契約書には「サブリース賃料は10年間据え置く…」などと記載されています。にも関わらず、今回の事例のように契約開始から僅か数年程度でサブリース賃料が一方的に減額されてしまったケースがあります。
実は「サブリース契約を含む普通建物賃貸借については、経済事情等に鑑みて現状の賃料が不相当な水準となった場合に契約条件を見直し、賃料の増減が請求できる権利がある」という最高裁の判例が既に出ており、これが契約の盲点になってしまっています。
そのため、例えサブリース契約書に記載された約束事であっても、訴訟に至った場合は民法が優先され、保証されていたはずのサブリース賃料が減額されるというリスクがあるのです。
つまりサブリース会社からの支払が契約書通りに履行されない…ということが起こり得るのです。
勿論、「かぼちゃの馬車」のように、当初の計画が甘く、想定していた入居者が集まらず賃料収入も確保できずに、最悪の事態としてサブリース会社そのものが資金難から倒産してしまうケースもあります。
このようにサブリース契約にも様々なリスクがあることを十分理解したうえで、契約を進めなければなりません。決してサブリース契約は『完璧』ではないのです。
余談ですが、某アパート建築メーカーや某大手サブリース会社なども、「30年家賃保証」とか「最長35年一括借り上げ保証」といった触れ込みでサブリースを募ります。そして、契約書にも30年、35年間中途解約しない旨が明記されています。
しかし、これも前述の減額請求権と同様、サブリース会社を含む賃借人による中途解約が民法で認められているため、状況によっては契約を解約されてしまう可能性が存在するのです。つまりこれも「中途解約や賃料減額はしない」と契約書で交わした内容ですが、サブリース会社の都合が悪くなったら、いつでもひっくり返されてしまうリスクがある…ということになるのです。
不動産投資と他の投資との違い
そもそも、忘れてはならないことですが、不動産投資が他の投資と大きく違うところが3点あります。
1つはその投資金額の大きさです。
不動産を購入するに際しては、何百万~、何千万~、何億円単位での投資資金が必要となってきます。これは不動産投資の大きな特徴と言えます。
もう1つはその大半が「銀行借入(ローン)」を活用して実施されていることです。
一般の金融資産などへの投資と比べて、その資金に銀行からのローンを充てるケースがほとんどです。なぜならローンを活用することで税務面でのメリットが得られるからです。その為、資金が潤沢にある方でも敢えてローンを活用したりするのです。
そして1つはその投資期間の長さです。
一般の金融資産の投資などと比べて、その投資期間は非常に長くなります。10年、20年、という数十年単位での投資になることは一般的です。これは上記のように銀行ローンを活用していることや税務上の優遇を受けることが主な理由に挙げられますが、株など運用のように「すぐ止める」ということはなかなかできるものではありません。
このように多額の資金が必要であり、投資の裏では銀行への返済が常にセットであること、またその期間が長期に亘ることが大きな特徴ですが、時としてこれらがリスクとなってしまう可能性があること十分に理解しておくことが重要です。
今はやりの不動産投資
今、賢者の方々が勧誘されている話の大半は、「かぼちゃの馬車」のようなアパート一棟モノではなく、分譲型マンションの区分所有が中心でしょう。
現在、空前の低金利と、都心部を中心としたマンション建築ブームから、金額的にも投資し易いワンルームを中心とした分譲型マンションへの不動産投資が全国的に活況です。
それらを企画・販売する業者も日本中に数多く存在しており、とりわけ賢者のように属性の良い方々には、銀行のローン審査も通り易いことから、盛んに勧誘が行われています。
現状の金利は確かに低いと言えます。確かにローンを組む上では非常に魅力を感じるところです。また都心部では好景気によるマンション需要があるのも事実です。
ですが本当にそれだけで話に飛びついてよいのでしょうか。
現在は建築部材の高騰、人手不足からマンションの建築コストそのものが上がってしまっていると言われています。これによりマンションの販売価格も上昇しているのです。しかしご存知の通り、日本ではそもそもの人口が減少している状況です。ですので今後もマンションの需給バランスが崩れることが無いとは言い切れないでしょう。
すべての物件の価格が下がるとも思えませんが、立地・利便性等々によりマンションの淘汰が起こっても何らおかしく無い状況も一方では存在するのです。
不動産投資はこういったことをすべて勘案し実行する必要があります。
確かに銀行からのローン金利は低く、目先の金利の安さに目が行きがちです。
特に不動産投資によって税金対策が計れる医師にはとてもおいしい話に聞こえます。
しかし不動産投資に関わらず、すべての投資は自己責任です。
そして投資には「リスク」が必ず伴います。中でも不動産投資には状況によって大きなリスクが伴うことを忘れてはいけません。
「税金対策」という勧誘フレーズに安易に乗せられることなく、じっくりと情報を収集し吟味した上で不動産投資は行いましょう。
不動産投資をする上で重要なポイント
当社はどのような物件を購入するにしても不動産投資の成功のカギは『当初の計画』がすべてとお話しています。
冒頭話した「かぼちゃの馬車」はまさにそこを踏み外してしまっていたのです。
これはマンションを所有する場合にも同じことが言えると思います。
この際、不動産会社からの勧誘話も基本的には「良いこと」しか言わないと思っていて間違いないでしょう。不動産会社からの情報を鵜呑みにせず、自分で独自に情報収集し、リサーチが必要でしょう。この点も重要なポイントです。
将来的には保有しておきたい不動産ですが、大きく間違うと『負の資産』になってしまう恐れのある投資です。是非、不動産投資を検討する場合には十分にリサーチの上、熟慮して実行されることをお勧めします。
株式会社VIDA MIA 代表取締役 大西宏明
保険やオペレーティング・リース、国内外の株式・債券・投資信託など多岐に渡った金融商品を活用しながら相続・事業承継対策スキームを策定し、専門家の税理士や弁護士とも提携して遺言の作成および民事信託(遺言代用信託)の提案も行なう。
特定の金融機関には属さず、近畿圏を軸に国内で幅広くワンストップ型の独立系総合金融コンサルティングを展開中。
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